「バッティング」による
味わいの創造
黒帯の特徴の一つ、それはどの料理とも素晴らしい相性を示すこと。これには理由がある。
通常、精米歩合を一定にして作られるが、黒帯は黒帯用として精米歩合の異なる数種類のお酒をつくり、それぞれ別々にゆっくりと時間をかけて熟成させていく。それぞれが独立した特徴ある味わいに育ち、そうして育てたそれぞれの酒を瓶詰め時にバッティングするのである。
「ブレンド」がお互いを補いながら一つの味に構成していくことだとするなら、
「バッティング」は独立した味わいのものを合わせ新しい味わいを創造することなのである。こうして「コク」「ふくらみ」「キレ」「品」を併せ持つ黒帯は、どのジャンルとの料理にも渡り合うことができる酒となる。
酒はただ飲めばいいやうなものでも
味がただの酒と思はせるものでなければならない。
それを飲む方はそれでいいのであっても、
その酒を造る方の苦心は並大抵のものでない。
言はば苦心すればする程ただ酒でしかないものが出来上って
酒好きを喜ばせるといふことになるのだらうか。
「黒帯」はさういふ酒である。
吉田健一