“みりん”と一口に言っても、世の中には大別して「本みりん(酒類)」「みりん風調味料(アルコール1%未満)」「醗酵調味料(アルコールはあるが不可飲処置されたもの)」の3つがあります。 本来の“みりん”と呼ばれるのは酒税法で定義される「本みりん」。「本みりん」にも、仕込み熟成期間が長く原料のアルコールに 本格米焼酎(単式蒸留焼酎)を使用する伝統的な製法と、原料のアルコールにリーズナブルな 醸造アルコール(連続式蒸留焼酎)を使用する標準的な製法とがあります。
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みりんの種類 | 原料 | アルコール度数 | 酒税 | 特徴 |
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本みりん (伝統的な製法の本みりん) |
もち米、米麹、本格米焼酎 | 13.5~14.5% | 対象 | 独特の芳香を持つ本格米焼酎(単式蒸留焼酎)に米麹、もち米を加えて仕込み、長期間じっくり熟成させて造られます。芳醇な旨味と豊かな風味があり飲んでも美味しくいただけます。 |
本みりん (標準的な製法の本みりん) |
もち米、米麹、醸造アルコール、糖類 | 13.5~14.5% | 対象 | アルコールは醸造アルコール(甲類焼酎)を使用し、短い熟成期間で一般的には糖類を添加し造られます。飲用には適しません。 |
発酵調味料 | 雑穀、醸造アルコール、糖類、塩 | 10~14%塩分1.5g/100mL以上 | 対象外 | アルコール分を含みますが、塩を加えて不可飲処置をしていますので酒税がかかりません。調理の際、塩分調整が必要になります。 |
みりん風調味料 | 糖類(水あめ、ブドウ糖等)、酸味料、香料など化学調味料 | 1%未満 | 対象外 | 原料はみりんと異なり、アルコール分も含みません。調理の際、煮切る必要はありませんが、みりん本来の効果とは異なる部分もあります |
福光屋のみりんは本格米焼酎(単式蒸留焼酎)にもち米、米麹を加えて仕込み、長期間じっくり熟成された本みりん。本みりんだから、もちろん飲んでも美味しい。
すべて地元・石川県産のもち米を使用し、時間をかけて熟成させる、昔ながらの製法で造っています。一度使って頂ければ違いを感じていただけることでしょう。
長年「福みりん」を使い続けてくださっている人気料理家・ワタナベマキさん。自宅での料理撮影や毎日の家族の食事にもこの本みりんが欠かせないというマキさんにお話を伺いました。
料理家
料理家。雑誌や書籍、テレビなどで活躍。日々食べるものを美味しく丁寧に、素材の味を生かし、昔ながらのレシピに現代のエッセンスを加えたレシピに定評がある。近著に『料理家ワタナベマキ』(オレンジページ)、『時間をかけて作りたい料理』(Gakken)、『ワタナベマキのいまどき乾物料理』(NHK出版)がある。
instagram @maki_watanabe
調味料選びは、料理の土台をつくってくれるのでとても大切です。調味料選びの基準は、 昔ながらの製法でしっかりつくられているもの、調味料や添加物が足されていない本来の姿であるものを選んでいます。 例えば、できるだけ精製されていないもの、信頼できる生産者の方が丁寧につくったもの、加工されすぎていないものを。 そういった調味料には本来の風味がしっかりあり、ミネラルや栄養素が多く含まれているので力強くもあり、 少し使うだけでも料理の中で存在感を発揮してくれます。 長年使っている「福みりん」もわが家の定番調味料です。
「みりん」と呼ばれるものには、いろいろな種類や違いがあることを知らない方が多いのではないかな?と思います。 本当に美味しい、本物のみりんにぜひ出会っていただきたいと思います。甘味だけでなく、旨味やコクを加えることができますし、 下味付けに使うとお肉をやわらかくしたり、魚の臭みを消してくれるのもみりんの効果。てんさい糖やきび砂糖を使うこともありますが、 やはり砂糖ではどうしても生み出せない風味が本みりんにはあります。調味料としてのみりんが美味しいだけで、料理がぐっとよくなります。
洋風の料理やエスニック料理、スパイスやフルーツに「福みりん」を合わせて、自由な発想で楽しく使ってみることをぜひおすすめします。3種にはそれぞれ個性があり、熟成がすすむにしたがって風味もガラッと変わります。 色の淡い「福みりん」は、これ1本で家庭料理には十分。使いやすくて、どんなお料理にも対応できる万能性があります。「福みりん 三年熟成」、「福みりん 十年熟成」は熟成の力を感じる格別な風味で、熟成みりんだから成り立つ料理もあります。ポイントは香りとコクでしょうか。 例えば、今回ご紹介したレシピ「鶏むね肉のクリーム煮」には「福みりん 三年熟成」を使用していますが、 このみりん特有のカラメルのような香りとコクを生かしたものです。 そんな風に、定番の煮物以外にも、自由で新しい使い方ができるのも熟成みりんの魅力です。
1ヶ月に多いときで一升瓶(1800mL)を約1本のペースで「純米本味醂 福みりん」を使っていますが、 味を付けるだけでなく、下味付けに使うときは、食材の臭みを消したり味が浸透がしやすくなったり、肉や魚がやわらかくなったり。 煮はじめにみりんを加えると煮崩れを防ぎながら、だし汁の旨味を深く滲み込ませてくれます。砂糖の置き換えと考えたら、 “みりん(さ)しすせそ”の順で使ってみるといいですね。さらに、分量の一部を残しておいて仕上がりに加えることで みりんならではの風味を添えることもできます。みりんをもっともっと日常的に使いこなして欲しいと思います。
調味料の原料や添加物はつねに気になり、しっかりチェックするというワタナベマキさん。食材は日によって変わっても、調味料はほとんど毎日が同じもの。
「家のご飯がちゃんとしていれば、外食で少し揺らいでも安心できる。調味料はそれを支えてくれる存在です」。
feature 01
みりんの原料として最も多く使うのが「もち米」です。福光屋のみりんは全て地元石川県産のもち米を使用しています。米どころ石川のもち米は粘りと旨味が特長、みりんの味わいにもしっかり行き届いています。
feature 02
福光屋の酒造りにおいて、欠かすことのできない米のひとつ「フクノハナ」。麹米に使うことで威力を発揮し、独自の旨味をもたらせてくれます。「フクノハナ」は昭和60年より、兵庫県出石町で福光屋1社によって契約栽培をしている希少な酒造好適米です。そんな「フクノハナ」を100%使用してつくった麹で福光屋のみりんは仕込まれています。
feature 03
酒類調味料である「本みりん」は、原料に「糖類」を添加することが
酒税法で認められています。自然の甘味が特長の調味料なのですが、
実際には多くの新式みりんは糖類添加をしているのが実情です。
福光屋では平成26年度より、新式みりん「福みりん」の糖類添加を廃止しました。
従来よりも麹米の使用量を増やすことで糖類無添加を実現しました。
*糖類:水あめ、ぶどう糖果糖液糖、砂糖
feature 04
「福みりん」の最大の特長は自家製の本格米焼酎を使用していることです。
自家製の米焼酎は自然本来の甘味があり、飲んでも美味しいリキュールのような上品な甘さが特長です。
また、自然のまろやかさは料理に深い味わいをもたらします。原料はお米と水と麹菌だけ。
塩、調味料、添加のアミノ酸などは一切使用しておらず、お米を丁寧に糖化させた自然製法の甘味だけへ、進化を遂げています。
*塩、甘味料、酸味料、香料、アミノ酸
feature 05
日本酒の熟成に早くから取り組んできた福光屋では、みりんにおいても仕込み熟成期間を長くとるようにしています。通常の本みりんでは2~3か月の熟成で出荷されるようですが、「純米本味醂 福みりん」は通常と比べおおよそ3倍以上の期間となる約1年、「純米本味醂 福みりん 三年熟成」では3年以上、「純米本味醂 福みりん 十年熟成」では10年以上の熟成期間をとっています。みりんは日本酒のように酵母によるアルコール発酵の工程がないことからも、糖、アミノ酸が非常に多く、熟成によってそれらが複雑に変化して、味に丸みを帯びコハク色に変化し、みりん特有の香味がつくられます。
1,430円(税込)
素材の旨味を引き出す
スタンダードな本みりん
これまで原材料に使用していた米アルコールを自社の純米酒を蒸留した本格米焼酎に変更し、品質をより高めた本みりん。 石川県産のもち米と兵庫県産の酒米・フクノハナを用い、しっかりとした甘味が特長。毎日の調理に使いやすい1本です。
2,200円(税込)
素材、製法にこだわった
本物の熟成みりん
香り、味わい、色味が絶妙に調和した3年熟成の本味醂です。石川県産のもち米と兵庫県産の酒米・フクノハナ、 自家製本格米焼酎を使用。和洋の料理はもちろん、ロックや焼酎で割った和製カクテル「柳陰」など、飲み物としてもお楽しみいただけます。
5,500円(税込)
甘くて濃厚で深い味わい
石川県産のもち米、兵庫県産の酒米・フクノハナ、自家製本格米焼酎を使用した10年熟成の本味醂です。キャラメルソースのように煮詰めるとデザートやアイスのソースにも。 料理やデザート、飲み物の風味づけ、ソースとして自由な発想でお使いいただけます。喜ばれる唯一無二の高級調味料ギフトとしてもおすすめです。
戦国時代の文献に「蜜淋酎」(みりんちゅう)として登場したのが最初で、
甘い珍酒として上流階層でもてはやされていたことがうかがえます。
一般階層に普及したのは江戸時代で、「下戸にはみりんを」と記した文献もあり、
お酒の飲めない人や女性のもてなしに飲用されていたようです。
元禄年間の文献には料理に「味淋酎」を使用したとあり、
これ以降、料理に使用したという記述が増えていきます。
「煮切る」という操作も江戸、文政年間に生まれました。
当時のレシピとしてはウナギの蒲焼のタレ、そばつゆ等、飲食店での使用が主でした。
当時のみりんは甘味や旨味が相当に濃いものであったと思われます。
一般的に調味料として使われるようになったのは明治以降のことで、
現在のような調味料の位置づけになったのは、技術開発が進み、
大量に生産できるようになった戦後のこととなります。
甘味
砂糖の糖分ががショ糖だけなのに対して、本みりんはブドウ糖やオリゴ糖など多糖類の糖分で構成されているので、深くてやわらかい上品な甘味に仕上がります。
消臭
アルコールが生臭さを取り除き、加熱することによって本みりんの持つ香りが高まり、臭いをマスキングします。
コクと旨み
本みりんに含まれるアルコールが素早く食材にしみこみ、もち米から生まれるアミノ酸、有機酸、糖類などの味が食材に行き渡りますので、深いコクと旨みが生まれます。
煮崩れ防止
アルコールが煮崩れの原因となるペクチンを溶けにくくして、煮崩れを防ぎます。見た目に美しいだけでなくうま味成分を外に逃しません。
テリとツヤ
糖が素材の表面に皮膜をつくり、美味しそうなテリとツヤをつけます。
「福みりん」を使い続けて約8年の人気料理家・ワタナベマキさん。この本みりんが欠かせないというマキさんに、福みりんを使った特別レシピをつくっていただきました。3種類の本みりんを使った煮物や蒸し料理、揚げ物からクリームやスパイスをきかせた6つの料理。 本みりんのよさ、美味しさを知り尽くしたマキさん流のアイデアをお届けします。
【材料(2人分)】
純米本味醂 福みりん 大さじ3
豚ロースしゃぶしゃぶ用 120g
じゃがいも 3個(450g)
長ねぎ 1/2本(50g)
しょうが千切り 1片分
三つ葉 1/2束
だし汁 300ml
塩 小さじ2/3
醤油を使わない「肉じゃが」のイメージでつくりました。あっさりした塩味ですが、ほどよい甘味とおだしがじゃがいもにしっかり滲み込んで美味しいです。スープまで飲んでいただきたい料理です!
【材料(2人分)】
純米本味醂 福みりん 大さじ3
白身魚 1尾(約600g)
蓮根 200g
長ねぎ青い部分 3、4本
白髪ねぎ 7cm 長さ2本分
梅干し 3個(30g)
白炒りごま 少々
塩 小さじ1
“煎り酒”(日本酒、梅干し、だしで旨味を煮出した日本古来の調味料)をヒントにしたレシピです。自宅で漬けた梅干しを使いましたが、昔ながらの酸味と塩分がしっかりある梅干しがおすすめ。味付けは「福みりん」だけのシンプルでしみじみした美味しさです。
【材料(2人分)】
純米本味醂 福みりん 三年熟成 大さじ3
鶏むね肉(皮無し) 250g
玉ねぎ 1/2個
アスパラガス 4、5本
ディル 少々
にんにく薄切り 1片分
生クリーム 100ml
塩 小さじ2/3
粗びき黒こしょう少々
オリーブオイル 小さじ2
濃厚な風味をもつ「福みりん 三年熟成」を最初に試したとき、すぐにクリームに合うはず!と思いました。クリーム煮が立体的な味わいになり、ぐっと深みが出ます。ソースの煮上がりばなに大さじ2杯で効果が出ますよ。
【材料(2人分)】
純米本味醂 福みりん 三年熟成 大さじ4
青魚(鯵、鯖、鰤など) 2切れ(250g)鯵、鯖などの場合は3枚おろし。
九条ねぎ 2本
レモンの皮すりおろし 少々
片栗粉 適量
揚げ油 適量
A
ナンプラー 大さじ1と1/2
赤唐辛子小口切り 1本分
レモン汁 大さじ2
※写真の料理は鰤を使用しています。
「福みりん 三年熟成」はしっかりとした香りと風味の個性があるので、鯖や鯵などの青魚のクセの強さに合わせたくなります。スイートチリソースは驚くほど砂糖を使ってつくるのが一般的ですが、みりんでつくると砂糖ほどの量を使わず、サッパリ軽く仕上がりますよ!
【材料 クレープ生地(5、6枚分)】
純米本味醂 福みりん 十年熟成 適量
ピオーネ
マスカット 各適量
ヨーグルト適量(軽く水切りをする)
薄力粉 40g(ふるっておく)
卵 1個
牛乳 130ml
溶かしバター(無塩) 8g
シナモンパウダー 少々
「福みりん 十年熟成」はバルサミコ酢のような芳醇なコクとさっぱりした甘味があり、 酸味も感じられます。いちじくや柿、いちごなどのフルーツを味醂マリネに。 また、乳製品との相性も格別ですので、バターやクリーム、ヨーグルトにも合います。
【材料(4人分)】
純米本味醂 福みりん 十年熟成 大さじ4
豆乳 300ml
メープルシロップ 大さじ2
生クリーム 100ml
板ゼラチン 3枚
しょうが皮付きスライス 1片分
シナモンスティック 1本
A
しょうがすりおろし 1/2片分
カルダモン(ホール) 3個
水 大さじ1
リキュールのような深い味わいが持ち味の「福みりん 十年熟成」はスパイスやハーブとよく合います。今回はしょうがとカルダモンの風味を効かせたシロップを仕立て、大人のデザートに。
澱と考えられます。みりんの中に含まれている原料米由来のタンパク質が析出(個体化)したものです。
みりんの醪(もろみ)を搾った後、濾過や成分調整をしていないために生じるものです。
全く問題ございません。澱の成分は原料米由来のタンパク質です。
みりんの中に含まれている原料米由来のタンパク質です。タンパク質とは、アミノ酸が多数繋がって析出(個体化)したものです。
析出量が多いと沈殿し、少ないと液内に浮遊した状態になることがあります。
全く問題ありせん。
高温、直射日光が当たらない冷暗所での保管であれば6ヶ月以内を目安にご使用ください。
問題ございません。時間の経過とともに、みりんの色が褐色へと変化します。これは、みりんに含まれている糖分とアミノ酸によるメイラード反応というものです。
冷暗所とは一般的に1~15℃くらいとされています。弊社のみりんは裏ラベルに記載の通り「直射日光・高温を避けて保管」を推奨しておりますため、15~25℃の室内での保管をおすすめいたします。一時的に25℃を超える室温で保管された場合も、直ちに品質に影響が出ることは少ないと考えます。
可能です。品質には問題ありませんが、みりんに含まれる糖分が白く析出する場合がございます。
甘さや旨味の量には変化はありません。ですが、褐色化によって味わいや香りがより複雑になります。また、味わいの幅や奥行きにも変化が生じることがあります。使用する分量については、ご自身で調整ください。
みりんには多くの糖分とアミノ酸が含まれ、それが時間や温度とともに反応し、褐色へと変化します。また、醸造季節によっても色合いが変わることがあります。