日本酒の経年変化と
ヴィンテージへの挑戦
ワインの品質は原料葡萄の品種や畑の土壌、気候などにより大きく影響され、それらが優れた調和をした年のワインの品質(ヴィンテージ)は素晴らしく、年々進化していくことは良く知られているが、ワインに比べ香りが低く、味が重く深い上、原料米の酒質への影響が小さい日本酒ではヴィンテージは存在するのであろうか。又、熟成によりどのように変化するであろうか。
この問題に真剣に取り組んでいる酒蔵が福光屋で、過去二十年近くに亘り、最高の出来の日本酒を貯蔵し、毎年その変化を研究してきた。その結果、日本酒の奥深さを示す数々の素晴らしい知見が得られたが、その一端を紹介すると、
一、日本酒にも明らかにヴィンテージが存在する。
二、熟成中ヴィンテージ酒は大きく進化し、新しい香味が加わり複雑になるが、キリリとしたタイプ、芳醇なタイプと様々で、酒により進化の速さや停止時期が異なり、時間の軸が消費者の新たな選択の楽しみといえよう。
元東京農業大学教授
吉澤 淑先生